2008 Fiscal Year Annual Research Report
職場におけるネガティブ・フィードバックの効用‐効果の規定要因の包括的検討‐
Project/Area Number |
20730409
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
繁桝 江里 Yamanashi Gakuin University, 法学部, 准教授 (80410380)
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Keywords | 社会系心理学 / 対人コミュニケーション / フィードバック / 信頼 / コミットメント / 仕事満足 / 組織風土 |
Research Abstract |
本研究では、「職務遂行に対する肯定的、または、否定的な評価をフィードバックする」というコミュニケーションに着目し、それが職場の成員に与える効果を検討した。 まず、30代から50代の勤務者を対象に半構造化インデプス・インタビューを行った。肯定的および否定的フィードバックには、職務を明確化するという効用があり、さらに、「送り手が自分を見ていてくれる」と認知することで仕事への動機付けや送り手への信頼につながるという効用も見出された。また、肯定的なフィードバックは対人関係的な効用が強いのに対し、否定的なフィードバックは職務志向的な効用が強いことが示唆された。ただし、否定的フィードバックが効用をもたらすためには複数の条件が存在することも示された。 次に、インタビュー結果をもとに、関東圏在住の正社員に対するインターネット調査を行い、フィードバックの効用とその条件を実証した。まず、フィードバックの頻度は、仕事での成長感やコミットメント、満足感、および、上司への信頼や満足感を高め、その効果は肯定的フィードバックの方が強いものの、否定的なフィードバックでさえも有意な効果を示した。なお、上司からのフィードバックの方が同僚からよりも効果が強いこと、否定的フィードバックは受け手が管理職である場合には効果がないことなど、送り手や受け手の職階の調整効果があった。 さらに、上司からの否定的なフィードバックが機能する条件として、メッセージ要因、関係性要因、組織要因について検討した結果、上司への信頼や日常的なサポートの認知という関係性の要因が最も重要な条件であり、さらに、内容の妥当性、肯定的フィードバックとの併用、解決法の提示というメッセージ要因や、職場の風土がルール志向ではなくサポート志向であるという組織要因も条件となっていた。 以上の知見は、「誉めるか叱るか」という職場の議論に対し実証に基づく回答を示したといえる。
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