2009 Fiscal Year Annual Research Report
職場におけるネガティブ・フィードバックの効用-効果の規定要因の包括的検討-
Project/Area Number |
20730409
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
繁桝 江里 Yamanashi Gakuin University, 法学部, 准教授 (80410380)
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Keywords | 社会系心理学 / 対人コミュニケーション / フィードバック / 信頼 / 職務満足 / メンタルヘルス / 組織文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、上司の職務に関わる肯定的・否定的フィードバック(以後FB)が、仕事の生産性と職場の人間関係という職場の二大要因に影響を与え、また、受け手の職務満足やメンタルヘルスにも影響することを実証することであった。FBの効果が、送り手の特性や職場の特性など多様な要因に依存することに注目して質問紙調査を実施し、7社609名の回答を得た。以下が分析結果の要約である。 ・FBの頻度が上司に対する評価に与える効果:上司からの肯定的・否定的FB双方の頻度が高いほど、生産性に関わる上司評価(能力に対する信頼性、パフォーマンスを高めているか)が高まるのに対し、人間関係に関わる上司評価(人柄に対する信頼性、上司に対する満足感)は、肯定的FBによってのみ高まる。 ・FBの頻度が受け手に与える効果:FB頻度が高いほど、受け手の職務における達成感や成長感が高まり、とくに肯定的なFBの効果が強い。なお、この効果は、受け手の職務の自律性の高さによって異なり、自律性が低い場合には肯定的なFBのみの効果があるが、中程度以上の場合には肯定的・否定的FBが同程度の効果を持つ。ただし、受け手のうつ傾向は、肯定的FBの頻度が高いほど低まるが、否定的FBの頻度が高いと高まってしまう。なお、自律性の高低で分けると、この効果は自律性の低い職務の場合のみで生じる。 ・FBの効果を高める要因:ある1回のFBが受け手にもたらす変化を予測する要因を検討した結果、肯定的・否定的双方のFBの効果にとって重要な要因は、上司の人柄に対する信頼性であり、一方、上司の能力に対する信頼性は関係がない。また、上司の感情表出も効果があり、ポジティブ感情の表出は肯定的FBの効果を高める一方、ネガティブ感情の表出は否定的FBの効果を低め、特に後者は最大の要因である。さらに、職場の組織文化は否定的FBの効果にのみ関係があり、目的志向やサポート志向の職場ほど、より良い効果が得られる。
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