Research Abstract |
(1)日常の相互作用と子どもの自己の発達に関する理論的検討 会話をはじめとする日常の相互作用において明らかになる「子どもの自己」に関する理論的考察を行った上で"presentational self"(観察者にとって固有の意味を持つ,相互作用における自他の布置から明確化する自己)の概念としてまとめ,審査・改稿の上,発達心理学の理論誌(Human Development誌)に掲載された。また,この"presentational self"の発達的側面に関し,海外の学会で報告を行った。さらに,これらの発表をふまえて今後の理論的展開について検討するため,これまで継続的に助言を受けてきたJaan Valsiner教授(アメリカ・クラーク大学)を訪問し,助言を受けるとともに,今後執筆する理論的論文の準備を行った。なお,本年度刊行予定であった,子どもの生活文脈(学校及び家庭)をテーマとした国際的な文化心理学論文集は,刊行に向けた最終段階にある。 (2)「作文やスピーチを通した自己の表現」に関する実践的研究 昨年度行った,心理学における「自己の育ち」への関心と,学校での作文(綴方)やスピーチ活動とのつながりを指摘する考察について,論文を公刊するとともに学会発表を行った。また,現職教員である大学院生と共同しつつ,小学校で行われた日記指導の結果や,小学校でのスピーチ活動の記録を検討し,上記の"presentational self"の考え方,および「ゆらぎ」と「位相」から発達を捉える理論的考察(氏家,1996)を参考にしながら,量的指標には還元できない自己の発達の様相について考察した。
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