2008 Fiscal Year Annual Research Report
健常乳幼児及び発達障害児における役割交替模倣と自他意識の発達
Project/Area Number |
20730431
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
川田 学 Kagawa University, 教育学部, 准教授 (80403765)
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Keywords | 役割交替模倣 / 乳幼児 / 他者理解 / 援助行動 / 共感性 / 社会的発達 / 観察 |
Research Abstract |
20年度は, 1歳1ヶ月〜2歳7ヶ月の健常幼児約50名を対象とし, 役割交替模倣の第二水準の獲得期を検討した。具体的な課題として, 次のようなサカナータモ課題を実施した。幼児の注意をひきながら材料を提示し, タモから魚 (紙製) を出してみせる。幼児が魚に関心を持って手に取ったら, 実験者は何も言わずに幼児の方にタモを向ける。幼児が魚をタモに入れたら, 「上手だね」と褒め, 残りも全部入れるように促す。幼児が魚を触ろうとしない場合は, 促す。しばらくタモを向けても魚を入れない場合は, 「お魚さんお家に帰りたいって」などと言って促す。幼児が全ての魚を入れたら, 「もう一回しようか」と言って, 魚を出す。幼児が魚を取りはじめたのを見計らって, 実験者はタモを伏せて置き, いくつか魚を取って, 1.5mほど離れた所からタモの方に向けて魚を構え, 前後に動かしてみる。幼児が実験者の意図を理解し, タモの口の部分が上になるようにして実験者に向けたら課題通過とみなした。その結果, 1歳後半から2歳前半にかけて通過率が大きく増加した。このことから, 役割交替模倣第二水準の獲得期は, 2歳前後の時期であることが推察された。ただし, 課題場面では様々な中間的・過渡的反応が観察されたため, 過渡的反応を丁寧に検討することによって役割交替模倣第二水準獲得までの発達プロセスを明らかにすることが求められる。また, 同時に実施した共感・援助行動に関する課題と役割交替模倣第二水準との連関性を検討したところ, 1歳後半から2歳前半にかけて, 手が取れたぬいぐるみをいたわったり, 「かわいそうねぇ」と言って手をつけようとするなどの行動が見られた。役割交替模倣第二水準では, 他者との相対的な役割関係を認識して自己の行動を調整することが求められる。このように, 役割交替模倣は他者の状況に対するモニタリングを必要としているため, 共感・援助行動の発達と関連が深いものと推察される。
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Research Products
(2 results)