2010 Fiscal Year Annual Research Report
青年後期から成人初期にかけてのアイデンティティの揺らぎと両親間不和に関する研究
Project/Area Number |
20730435
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宇都宮 博 立命館大学, 文学部, 准教授 (10320152)
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Keywords | 成人初期 / 両親間不和 / アイデンティティ / 主観的幸福感 / 親役割への適応 |
Research Abstract |
昨年度は、無子有配偶者を対象に、アイデンティティと子どもをもつことをめぐる意識や主観的幸福感との関連について、両親間不和による影響に焦点を当て検討した。本年度は、乳幼児をもつ有配偶者(長子が4歳未満)における、親役割への適応(育児感情)と成人子自身の配偶者役割への適応(コミットメント)について、アイデンティティ発達の観点から検討した。その際、主観的幸福感や父母双方との心理的距離等との関連についても着目した。 データの収集は、大阪府、京都府、兵庫県在住の20代、30代(学生を除く)を対象とするインターネット調査によって行われた。なお、分析では、両親がともに初婚で、現在も結婚生活を継続している若年成人463名(男性198名・女性265名)が対象となった。平均年齢は、32.2歳(SD=3.9)であった。 分析の結果、育児への感情は、主観的幸福感と正の関連が示されるとともに、自分自身の結婚生活へのコミットメントが人格的な次元に根差したものか、もしくは非自発的な要因によるものかによっても異なっていた。また、アイデンティティ確立の不十分さによって、育児への感情が否定的になる傾向も示された。 そうした状況の背後には、棚上げされた源家族の課題が存在することがうかがわれた。すなわち、両親間葛藤への巻き込まれの程度や、両親間不和を悩みの種としてとらえている傾向が高い者において、アイデンティティ発達の停滞傾向が確認され、そのことにより自己の配偶者役割や親役割への適応に困難さが生じていることが示唆された。また、両親間不和によって、老親からのサポート力が低下している可能性も考えられた。
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