Research Abstract |
本研究は, 社会不安障害(SAD)に対する認知行動療法の治療効果を高めるために, 主要な治療技法であるエクスポージャーを効果的に実施する方法の開発を目的としている。SAD患者は, 対人場面において自分の動悸や震えといった生理的反応に注意を向けやすく, 他者が否定的な表情や態度を示していないことに気づけず, エクスポージャーの効果が得られにくい。この自己注目を修正するために, 注意トレーニングが提案されている。しかしながら, 現在行われている注意トレーニングは他者に注意を向けるように教示するだけであり, 不安が強まったSAD患者が注意を操作するのは難しいと考えられる。今年度の研究目的は, 効果的な注意トレーニングの方法を開発するために, 社会不安者が対人場面において自分の生理的反応と他者に対してどのようなバランスで注意を向けているかを事象関連電位を用いて調べることであった。社会不安の高い者と低い者を抽出した後, 事象関連電位を用いた課題を行った。課題では, パソコン画面上に他者の表情写真を呈示するとともに, 指先に装着した電極から振動刺激を与えボタン押しを求めた。この振動刺激は, 実験参加者の生理的反応を示すものであると教示し, 生理的反応に関する刺激とした。表情写真としては, ネガティブ表情(angry, disgust), ポジティブ表情(happy), ニュートラル表情を呈示し, 呈示する表情の感情価によって自分の生理的反応に対する注意の向け方が異なるか調べた。現在, 23名に対して実験を行い分析中である。この実験は実験参加者の人数が48名になるまで来年度も継続して行う。
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