2010 Fiscal Year Annual Research Report
90年代と2000年代の時代性が青年期心性に及ぼした影響に関する心理学的考察
Project/Area Number |
20730458
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
安立 奈歩 椙山女学園大学, 人間関係学部, 講師 (70379519)
|
Keywords | 青年期心性 / 縦断的研究 / 現代日本の時代性 |
Research Abstract |
青年期の心理臨床学的研究は30年足らずで発展したが、社会的変化が大きかったために継次的変化が十分に採り上げているとはいえない。また、一般青年の理解と治療的な個別理解の観点とを有機的につなげた研究は少ない。本研究では、1990年代と2000年代のデータ比較を通して、時代の影響を反映する青年期の心身の様相を心理臨床学的な観点から考察することを目的とする。面接調査においては研究の遂行過程自体にも治療的意味を包括し、青年の理解と対応を実践的に再検討する。 平成21年度は、現代青年が内面を言語化するのが苦手と指摘される点に着目し、大学生を対象として、境界例心性質問紙(安立1999)、Galex(後藤他1999)、日常的解離尺度(舛田他2005)を実施した結果、自分の感情への気づきが難しい青年は境界例心性が高まることが示され、また、内省が苦手な上に場によって見せる顔を使い分けるような青年は自尊心低下が生じることが示されたことより、青年支援の方向性について論じた。さらに、情動の変動や孤独感と解離の間には関連が見られたが、同一性と解離の間には関連が見られなかったことより、同一性を保って生きるあり方と、場によって自分を使い分けるあり方とが質的に異なることが示唆された。さらに、18名の大学生を対象に、フィンガーペインティングと切り絵を用いた表現の質的研究を実施したところ、内省が苦手な青年は、イメージ体験が不明瞭で借り物のイメージで表現がなされたり、グループ内で孤立しない無難な表現や緊張した力動を緩和する意図の表現などが重視されており、これらは現代青年の特徴の一つであると論じた。 平成22年度には、上記の質問紙調査を論文にまとめ、質的研究については学会報告を行なった。それらと同時に、同意を得られた者を対象にロールシャッハ・テストを施行し、そこに反映される現代青年の特徴について検討を試みており、現在も継続中である。
|