2009 Fiscal Year Annual Research Report
継続的箱庭制作における体験の連続性に注目した箱庭療法の「治療的要因」に関する研究
Project/Area Number |
20730459
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
石原 宏 Bukkyo University, 教育学部, 講師 (40378500)
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Keywords | 箱庭 / 箱庭療法 / 体験 / 連続性 / 治療的要因 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)箱庭制作を行うセッション内での体験と、(2)その体験がセッション間の制作者の日常生活にどのような形で影響を与えるのか、また(3)次の箱庭制作を行うセッションに向けて制作者にどのような心の動きが起きるのか、さらに(4)前のセッションでの体験およびセッション間の日常生活における体験が次のセッションにどのような影響を及ぼすのかといった諸点を明らかにすることにある。平成21年度は、前年度に個別の箱庭制作を含む面接調査(2セッション)を行って得たデータ(箱庭制作の過程の録画データ、および制作過程における体験・調査に参加すると決めた時点から[セッションI]に訪れるまでの間の心の動き・[セッションI]が終わった直後から[セッションII]までの間で箱庭制作に関連すると思われる体験、[セッションI]が近付くにつれての心の動きなどに関するインタビューデータ)の質的分析を行った。また、箱庭療法・遊戯療法の経験がとくに豊富な臨床心理士2名(心理臨床経験11年と8年)とともに、調査データをもとにしたディスカッションを行い、それぞれの心理臨床経験を踏まえてクライエントの体験の連続性という観点から有用となる分析視点の抽出を試みた。 調査データの質的分析に併せ、箱庭療法の臨床事例研究および心理療法の治療的要因に関する研究等の文献を精査し、継続する心理療法のセッション内での体験とセッション間での体験の相互作用についての知見を収集した。 平成22年度に総括的な考察を行う予定であるが、平成21年度時点では、箱庭療法に限らず、ある「技法」を心理療法に持ち込むことが、クライエントにとって心理療法場面での体験を含めたさまざまな体験をその「技法」に凝縮するためのしかけとして働いており、箱庭もまたそうしたしかけして、クライエントの体験に影響を与えていることが示唆されている。なお、これまでにも繰り返し述べられてきたことではあるが、箱庭という道具の存在のみならず、そこで見守るセラピストの存在が不可欠であり、セラピストが箱庭療法にいかに関わっているのかという視点をもってさらなるデータを再度分析することが平成22年度の課題となる。
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