2010 Fiscal Year Annual Research Report
加齢にともなう高次認知処理の質的変化と脳機能に関する実験的研究
Project/Area Number |
20730475
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川合 南海子 愛知淑徳大学, 心理学部, 講師 (20379019)
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Keywords | 高齢者 / 言語流暢性 / エラー分析 / 二重課題 / 抑制 / 作業記憶 |
Research Abstract |
本研究は,高齢者の言語流暢性が二重課題となる作業を行った場合にどう変化するのかについて,重複エラーと内容エラーに分けて検討した。重複エラーとは同じ単語を2度以上報告したエラーで短期記憶と作業記憶に関係していると考えられ,内容エラーとは課題のルールに不適切な単語を報告したエラーで抑制機能に関係していると考えられる。実験参加者は,大学生22名と高齢者26名(平均70.50歳)であった。課題には,言語流暢性課題の音韻性課題と意味性課題を用いた。作業の負荷は言語流暢性課題のみを行う単一課題条件と,言語流暢性課題と同時に机を叩く作業を行う二重課題条件を設けた。参加者にはそれぞれの課題で提示された文字またはカテゴリーに属する単語をできるだけ多く,できるだけ早く口答で報告するように求めた。生成語数には年齢の主効果はみられなかったことから,高齢者であっても言語流暢性は低下していないことが明らかになった。いずれの年齢群でも音韻性課題と意味性課題の生成語数の間に有意な差がみられたことから,高齢者でも意味性課題のほうが音韻性課題より単語が生成されやすいことが明らかとなった。高齢者は重複・内容エラー数ともに大学生よりも多いことが明らかとなったが,重複エラー数と内容エラー数を比較すると重複エラーのほうが多かった。重複エラーが多かったのは,短期記憶の保持と作業記憶の保持が加齢の影響により低下しているためと考えられる。内容エラーの数において高齢者のほうが大学生よりも多かったことは,ルールに不適切な単語を報告しないようにする抑制機能が低下していると考えられる。しかし,単語の生成数が増えたにもかかわらず,それにともなって内容エラー数が増えるということはなかった。つまり,ここでみられた抑制機能の低下は漸進的なものではなく,ある一定の負荷がかかると顕在化するのだと考えられる。
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Research Products
(2 results)