2010 Fiscal Year Annual Research Report
両眼協調・非協調性眼球運動の測定および三次元環境知覚との関係解明
Project/Area Number |
20730478
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
光藤 宏行 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 講師 (00426644)
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Keywords | 視覚情報処理 / 眼球運動 / 三次元知覚 |
Research Abstract |
本年度は以下の二つの研究について成果の発表と心理物理学的実験を行った。一つは、両眼のサッカード眼球運動に伴って、視対象が動いて見えるという知覚現象の報告である。この錯視と、類似した現象を調べることで、人間の視覚系がどのように知覚的安定を保持しているのかについての示唆を得ることができた(Mitsudo & Nakamizo, 2010;光藤,2011)。 もう一つの研究では、人間の視覚系が環境から得る水平網膜像差と垂直網膜像差をどのような方法で統合しているかを明らかにするため、水平像差と垂直像差の局所的解釈が多義的となる連続線からなる視覚模様を用いて、誘導効果が得られるかを実験的に検討した。誘導効果とは、ある模様とそれを垂直方向に拡大した模様を両眼融合すると、垂直軸まわりの面の傾きが知覚される現象である。観察者の課題は両眼刺激を観察し、その見かけの傾きを再生法によって報告することであった。実験の結果、刺激の種類に関わらず、誘導効果が得られた。つまり、刺激がもつ局所的な水平像差に関わらず、垂直像差が見かけの傾きを決める要因であることが分かった。この結果は、視覚系は垂直像差を優先的に処理し、その上で水平像差を使って見かけの奥行きを作り出しているというモデルの予測と一致することが明らかとなった(光藤・酒井・金子,2010)。 これらの研究から得られた知見は、見やすく疲れにくい映像表示装置の開発に応用可能である。
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