Research Abstract |
本研究の目的は, (1) ドライビングシミュレータと実験心理学的手法を組み合わせ, 自動車運転時における有効視野の空間特性を明らかにする, (2) 運転熟練者と未熟練者の有効視野を比較する実験を行う, (3) 視野を実験的に制限した時の眼球運動パターンと有効視野の大きさの関係を検討することである. 本年度では, 1に関する実験を行った. この実験では, シミュレータ上での運転作業中に, 運転映像上に2種類の文字刺激を提示し, その選択反応時間を測定した. 結果は, 上視野方向に刺激が提示された場合に, その他の視野方向の場合に比べて, 反応時間が有意に遅いことを示し, 運転時において上視野方向での有効視野が他の視野方向に比べて, 狭いことを示唆する. また右視野方向に比べて, 左視野方向に刺激が提示された場合に, 反応時間が有意に遅かった. これは, 運転時において左視野方向で, 右視野方向よりも, 有効視野が狭いことを示唆する. 眼球運動分析の結果は, 上視野方向においてサッカード回数が下視野方向よりも多いこと, 刺激の出現から反応までの眼球移動量が上視野方向において, 他の視野方向に比べて, 長いことを示した. 以上の結果より, 運転時において有効視野が視野方向によって変化し, その形状が非対称であることが明らかとなった.この研究成果は交通事故防止における教育や, 運転者の認知特性に沿ったサポートシステムの構築において, 重要な知見となったと言える. 本年度では, 更に視野制限実験の実施に向けた準備及び予備的実験を行っており, 今後更なる検討を行っていく予定である. 以上の研究及び関連研究の成果については, 国内外での学会において発表した.
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