Research Abstract |
自動車運転時において,運転者は主に視覚情報に基づき適切な運転行動を遂行しており,事故原因の多くが視覚情報の知覚・認知エラーに起因することが指摘されている.本研究では,交通事故との関連が高いことが報告されている有効視野に着目し,運転中の有効視野の空間特性に関する実験心理学的検討を行った. 本年度においては,視野制限法を用いて,視線移動パターンと有効視野の関係についての予備的な検討を行った.実験では,運転を模した課題として,レーシングゲームを用い,その間の被験者の視線を計測し,視線データに基づいて,視野中心の一定の領域のみが視認可能となるように視野周辺を制限する窓刺激を提示した.視認領域(窓)の大きさを操作(直径10,20,30deg)し,特定のコースの走行にかかるトータルタイムと眼球運動を測定した.結果は,視認領域が非常に狭い場合(10deg)には,視野制限をしない場合に比べて,トータルタイムが有意に遅くなり,視認領域が大きくなるに伴い,トータルタイムが短縮することを示した.視認領域の大きさが直径20degを超えると,トータルタイムは一定になり,また視野制限無条件のトータルタイムとも差が無かった.これらの結果は,運転時の有効視野がおよそ直径20deg程度であることを示唆し,先行研究と一致した.また,眼球運動解析の結果は,視認領域が大きくなるに伴いサッカード距離が長くなることを示し,有効視野及び周辺視野の大きさに合わせてサッカード距離が変化することを示唆する.今後,ドライビングシミュレータ上での運転作業場面において,視野制限を行い,運転時の有効視野と眼球運動の関係について詳細に検討してゆく予定である.以上の研究成果及び関連研究の成果は,国内外の学会において発表した.
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