2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730509
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 晶子 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10347081)
|
Keywords | 発達概念 / 山下徳治 / マールブルク大学 / 富士川游 / 『児童研究』 / 教育病理学 |
Research Abstract |
本年度は、最終年度として、山下徳治のライフヒストリー研究を中心に調査を進めた。 (1)山下の鹿児島時代の生育史を辿り、初発の教育への関心の質を明らかにした。鹿児島県下の教育界の動向や、山下が受けた郷中教育(自彊学舎)関係について調査を行った。その結果、人類の「原始性」への関心が教育者としての素地にあったこと、海洋学や植物学への関心もまた教育との関わりで登場していたこと、教育実践では身体の鍛錬が中核に位置づけられ、晩年の身体教育の萌芽がこの時期に現れていたことを明らかにすることができた。 (2)ドイツ留学時代の史料収集を行った。山下が1920年代半ばに留学したマールブルク大学には、当時の聴講生名簿、受講した科目がわかる資料が大学文書館に保管されていたほか、市の文書館にて彼の住民票が発見され、他の日本人留学生との関係など留学中の生活の一端が明らかになった。また、大学附属図書館や、哲学部附属図書館において、当時の講義録や著作物の複写を行った。その結果、山下が、ドイツにおいて学業に励むと同時に、宗教的た生活を送っていたことがうかがわれ、山下研究におけるキリスト教の位置づけが看過できない課題であることが明確となった。 (3)ドイツ調査において、昨年度中心的に取り組んだ医学者富士川游の教育病理学研究について、ドイツの動向を調べた。ここでは、富士川がイエナ大学に留学していた当時の関係文献を得ることができたが、その現在までの病理学的な教育論の系譜について十分に追うことができなかった。今後は、「治療」概念の検討を含め、ドイツ医学を経由した子どもの発達観の検討を課題としたい。
|