2008 Fiscal Year Annual Research Report
国民学校芸能科音楽の研究-長野県師範学校附属国民学校の実態と聞き取り調査を中心に
Project/Area Number |
20730511
|
Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
小林 玲子 Nagano College of Nursing, 看護学部, 助手 (00468232)
|
Keywords | 国民学校 / 芸能科音楽 |
Research Abstract |
太平洋戦争開戦の年、1941年の4月に公布された国民学校令によって、それまでの「尋常小学校」は「国民学校」へと名称を変えた。戦時下の国民学校では、「国民の基礎的錬成」という一大目標が掲げられ、それを達成する手段として全ての教科目が再編成された。中でも尋常小学校における「唱歌科」は、「芸能科音楽」として大きな変貌を遂げた。日本の初等音楽教育において「音楽」という教科名が用いられたのはこれが初めてである。尋常小学校「唱歌科」で扱われる領域は単音唱歌のみであったが、芸能科音楽では「合唱」、「器楽」、「鑑賞」、「音感教育(絶対音感教育、和音感教育)」等が取り入れられることとなった。それは、「国民的情操の醇化」という精神面と、国防や産業の発展といった面とに音楽が資することが主張されたためであった。 「芸能科音楽」の研究は、戦後、史料調査を中心に行われてきているが、その授業の実態は未だ明らかにされていない。本研究では、長野県の長野市、上田市、松本市在住の、当時の国民学校教師・生徒を対象とし、国民学校の中での芸能科音楽の位置付けやその内容(授業内容、教材、設備面、等)に関する聞き取り調査を実施してきた。音楽科の授業は、音楽教師という人的環境と、楽器や音楽室の音響設備などの物的環境に影響されるところが大きい。これまでの調査から、戦時下の長野県では、長野県師範学校附属国民学校及び松本女子師範学校附属国民学校を中心に、国民学校令に先駆けた「芸能科音楽」の積極的な研究・実践が行われていたことが分かってきた。今後、アンケート調査と聞き取り調査、また学校文書等の文献調査の継続により、教師と生徒それぞれの視点から、長野県師範学校附属国民学校における芸能科音楽授業の一端を明らかにし、高齢者の学齢期における音楽体験とその影響を考察することにより、人間と音楽との関係性、音楽教育の意義に対する提言が導かれると考える。
|