2011 Fiscal Year Annual Research Report
多文化共生社会における市民性を育てる教育の理論と実践の研究ー自尊感情の観点からー
Project/Area Number |
20730516
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
野崎 志帆 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (90351759)
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Keywords | 市民性教育 / 人権教育 / イギリス / 多文化社会 |
Research Abstract |
今年度は、2009年の英国調査の整理および分析を主に行うと同時に、そのフォローアップのための調査の準備を主に行った。調査では、2009年調査と同様、北部イングランドの義務教育段階の学校(小学校3校、中学校3校)にて調査を行い、白人主流の学校および民族的マイノリティが多数在籍する学校における市民性教育の実施状況、多様な背景をもつ子どもへの対応、社会の多様性についての学習状況の把握、教師および生徒のこれらに関する知見を収集した。また2010年の政権交代後の現政権の教育方針の転換が現場にどのような影響を与えるのか、与えていないのかに注目した。特に、2000年以降、イギリスが力を入れてきた学校を拠点とした「コミュニティの結束(community cohesion)」の取り組みについてはかなり学校に浸透しつつあり、それが学校間、および学校と地域のつながり(に関わる取り組み)に確実に変化を与えていること、現在は「人種」や「民族」の問題というよりも、「貧困」や「社会的排除」に焦点が移ってきているということが明らかとなった。また、比較的民族的マイノリティの率が少なく、白人主流の社会経済的階層も低くない地域の学校では、海外の学校との国際交流や、国際理解教育の実践を積極的に導入する傾向が見られた。このことは、日本の学校においても一定見られる「国際化のための教育」と共通する点であろう。一方、民族的マイノリティの率が高く、社会経済的階層の低い生徒の率が高いにも関わらず、学力においても2009年時調査に引き続き成果を上げ、生徒の多文化社会における市民性の意識も高い「効果のある学校」もあり、この学校の詳細の分析、および各学校における「所属の意識」やアイデンティティの育成に関わる学習活動、教育環境などに焦点を当てた具体的な実践については、集めたデータのさらなる整理、分析が必要である。
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