2011 Fiscal Year Annual Research Report
ペスタロッチーにおける教育と福祉の原理的融合に関する基礎研究
Project/Area Number |
20730517
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
光田 尚美 関西福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (90412098)
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Keywords | ペスタロッチー / 孤児教育 / 孤児院 / 近代スイス / 児童福祉施策 / 道徳的自立 / 教育思想 / 援助理念 |
Research Abstract |
平成23年度は、入手した文献・資料の分析を通して、「研究の目的」の(1)に記した「時代考証にもとづくペスタロッチー教育思想の再評価」を試みた。目指されたのは、ペスタロッチーの教育思想を近代スイスにおける児童福祉の思想・実践の展開のなかに位置づけることによって、そこに見えてくるものは何かを探ることである。そのために、二次文献の助けを借りながら1800年代の資料を紐解き、近代スイスの児童福祉施策の実際とその変遷を整理した。注目したのは、チューリッヒに登場したカントン立の孤児院である。エッテンバッハに開かれたこの施設は、刑務所と孤児院の機能を併せ持っていたが、それは当時の貧児や孤児が、犯罪者や囚人と特性において近似するものと見なされてからである。人道的見地から孤児院改革が進められ、孤児教育が予防的な福祉措置として意識されるようになるが、一方で、より積極的な人間育成を企図した私立の施設が登場するようになる。ペスタロッチーの実践も、こうした私人による児童福祉施策の一つに位置づけられるが、しかし、彼の提起した問題設定は、公的孤児院における教育や私人による貧児・孤児教育の実践とは一線を画す援助理念を示していた。それは一つに、家庭的な関係及び環境における子どもの「育ち直し」を実現していたこと、二つに、職業技術の習得にとどまらない、技能の訓練及び習得による道徳性の育成が意図されていたことに求められる。こうした援助理念や、その根底に存するペスタロッチーの人間学(自己実現としての道徳的自立のあり方と道徳的自立への人間生成論)は、今日において、自立への教育やケアのための理論として再定位することが可能である。以上の成果を、学会(2件)・研究会(2件)での口頭発表及び学会・大学の紀要(3件)にて発表した。教育思想として括られるペスタロッチーの主張を、福祉の発展史に位置づけて読み解くことの意義が評価された。
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Research Products
(5 results)