2009 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育の第2次大衆化による地域社会の構造変動に関する研究
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20730526
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪股 歳之 Tohoku University, 高等教育開発推進センター, 助教 (60436178)
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Keywords | 高等教育 / 地域 / 就業構造 / 社会変動 |
Research Abstract |
平成21年度には、主に地域別労働市場の構造変動を把握するためのデータ収集と集計・分析作業を行った。大卒就業者の増加にもっとも大きな影響を与えていると考えられるのはサービス業である。他の産業と比較して高い大卒者比率を維持していることに加え、就業者数が減少を続けている産業もある一方で、サービス業ではその数が維持もしくは拡大しているため、就業者全体に占める占有率も1970年以降に急激な拡大を遂げている。 1970年から2000年までの期間におけるサービス業の就業構造に注目してみると、特に90年から2000年の期間に都道府県間の大卒就業者比率の差が拡大している。1970年以降、大卒就業者比率はほぼ一定のペースで上昇を続けているものの、就業者数そのものは90年から2000年の期間でほぼ停滞している。このことは、この期間に学歴代替による大卒就業者の増加が顕著に生じていたことを示すが、大卒就業者数の増加の様子には地域による差異が存在している。サービス業従事者数の増加が大きかった地域では、就業者数そのものの拡大に加え、大卒就業者比率の上昇も顕著であった。しかし、サービス業従事者数の増加が相対的に小さかった地域では、学歴構成の上昇もそれほど大きくなく、大卒就業者の新規参入が困難であったことがうかがわれる。就業者の年齢別にこれらのことを検討すると、後者の地域では、特に若年者の参入が少なかったことが明らかとなった。大卒の若年者にとって労働市場への参入の容易さが地域によって異なっているとともに、そうした背景がさらに地域間の就業構造の差異を拡大していることが指摘できる。
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