2010 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育の第2次大衆化による地域社会の構造変動に関する研究
Project/Area Number |
20730526
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪股 歳之 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (60436178)
|
Keywords | 高等教育 / 地域 / 就業構造 / 社会変動 |
Research Abstract |
平成22年度には、地域別労働市場の構造変動を把握するためのデータ収集と分析作業を継続して行うとともに、特に地場産業従事者の高学歴化についての聞き取り調査を実施した。 サービス業が他の産業と比較して高い大卒者比率を維持していることに加え、就業者数そのものも拡大していることから、大卒就業者の量的な増加にもっとも大きな影響を与えていることに変わりはない。その一方で、ケーススタディとして当該年度に訪問調査を実施したのはいわゆる地場産業と呼ばれる製造業である。地場産業は、就業者数から見ると小規模ではあるものの、それぞれの地域において古くから存在し、地域社会を特徴づける重要な要素のひとつである。古くから存在することに加え、中核を担うのが技能者であることなどから、地場産業従事者の養成に高等教育機関が積極的に関わることは少なかった。しかし近年、高等教育機関の量的拡大や就業者全体の高学歴化の進行、高等教育機関と地域との連携が推進されてきていることなどにより、地場産業に技能職者として入職する大卒者も増えつつある。こうした大卒者の間では、高等教育機関での学習経験や専門知識が職務内容に一定の効果を有していると評価されており、大学等で学んだ学問的知識を背景としながら、職務遂行に必要な知識やスキルの一般化が進められている。しかしそれらはこれまで従事者の勘や経験として個人に蓄積される性格が強いもので、すべての過程の言語化や数値化には限界があることが指摘されている。研究機関や高等教育機関などとの組織的な連携のみならず、大卒者の入職により伝統的な地場産業にも様々な面で変化が進みつつあるが、小規模な事業所が多く、継続的に大卒者を雇用することが難しいことに加え、担うべき職務が肉体労働を含むなど多岐に渡り、大卒者にとって魅力的な職業とみなされない場合が多い、などが地場産業における高学歴化の制約条件となっている。
|