2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730532
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒田 千晴 Osaka University, 大学院・工学研究科, 講師 (30432511)
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Keywords | 国際教育 / 教育政策 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中国の留学政策、中国人留学生・研究者の帰国奨励策にみられる「頭脳還流」対策、「孔子学院プロジェクト」に代表される対外漢語教育政策等、中国の国際教育政策の諸相を経済的・政治的・文化的側面から多角的に分析し、中国が国際教育政策を手段として知識経済時代の台頭にいかに対応しようとしているのか、その国家戦略の一端を国際教育政策の視点から検証することである。平成20年度は中国政府の国家公費派遣留学政策、帰国奨励策・「頭脳還流」の施策、及び中国語教育の普及・振興等の対外教育政策について、中国教育部等の関係機関の政策文書を分析した上で、中国国家留学基金管理委員会、北京大学、清華大学、北京師範大学、北京外国語大学の国際教育担当者を対象に、聞き取り調査を実施した。2007年中国政府は、国家公費派遣留学奨学金制度、「国家建設高水平大学公派研究生項目」を施行した。「国家建設高水平大学公派研究生項目」は、中国の重点大学から毎年5000人の博士レベルの学生を海外の一流大学の一流教授のもとに派遣するという壮大な派遣留学プロジェクトで、中国政府の人材強国戦略の一環として位置づけられている。この極めて戦略的な中国政府の派遣留学政策の施行が、実際に学生を送り出す中国側の大学、また学生を受け入れる側の大学にどのようなインパクトを与えているか聞き取り調査を行った。その結果、受け入れ側の海外の大学では、本プロジェクトを優秀な中国人留学生を確保する好機ととらえ、本制度の積極的な活用を図っているのに対し、送り出し側の中国の大学では、優秀な学生を大量に海外に送り出すことに対し、中国国内の大学における研究水準の低下、研究の進捗の遅滞、人材流出を懸念する声が聞かれ、中国の大学関係者が必ずしも本制度を全面的に支持しているわけではないということが判明し、今後、本派遣留学政策の有効性について、引き続き注意深く検証していく必要があることを確認した。
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