2010 Fiscal Year Annual Research Report
高度成長期における職業教育・進路教育実践の歴史社会学的研究
Project/Area Number |
20730535
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松田 洋介 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
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Keywords | 移行 / ペダゴジー / 進路教育 / 職業教育 / 教育運動 |
Research Abstract |
2010年度は、3年間の研究の最終年度として、2008年度と2009年度の調査の中で蓄積されたデータの分析に取り組んだ。その結果、以下の成果がえられた。 1つは、高度成長期の職業教育推進政策をめぐる諸主体の対応を分析し、1960年代後半の時点で、産業界や国民教育運動から批判を受けていたのはもちろんのこと、高等学校の側からも高校教育大衆化への対応をめぐる困難についての指摘が出されていたことである。また、そうした全国的な動向の裏で、富山県と京都府との間のような地域間の問題の顕在化のズレも浮かび上がった。二つ目は、全国進路指導研究会の分析を進め、1960年から1970年にかけての転換、特に、「高校全入」の実現か「就職することも含めた進路指導」の構築かをめぐる論争を整理しながら、同団体が適応主義的な進路指導を批判しつつ、抵抗的な進路指導のあり方を構築するプロセスを明らかにしたことである。具体的には1960年代後半に打ち出された全国進路指導研究会の「進路指導の三原則」の中に現れた「正しい進路指導」という課題設定が、当時の適応主義的な進路指導に抵抗する上で有効であることを明らかにした。これら上述の関わる論文は、『青年の社会的自立と教育-高度成長期日本における地域・学校・家族』に掲載され、2011年2月に大月書店より刊行された。三つ目は、上述の全国進路指導研究会を対象に、階級的・階層的格差をどのように認識し、それにどのように取り組んだのかという点に焦点を当て、高度成長期の民間教育運動の教育実践ならびにそれを下支えする教育思想についての検討を行い、教育目標・評価学会全国大会にて報告を行った(報告題目:「戦後日本の民間教育実践における階級的・階層的不平等への取り組み(1)-高度成長期における全国進路指導研究会の実践の展開に着目して」)。それ以外では、高度成長期に完成する〈学校から職業社会への移行〉の黎明期でもある1930年代に焦点を絞り、実証研究を行った書籍について検討し、その意義といくつかの課題を指摘した(〈学校から職業社会へ〉の黎明期にみるペダゴジーの地殻変動-木村元編著『人口と教育の動態史-1930年代の教育と社会』を読む』『〈教育と社会〉研究』第20号)。
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