2008 Fiscal Year Annual Research Report
多文化社会における主流言語教育の研究 オーストラリアの移民英語プログラムを中心に
Project/Area Number |
20730536
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 幸倫 Sagami Women's University, 学芸学部, 講師 (60449113)
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Keywords | 成人移民 / 英語教育 / オーストラリア |
Research Abstract |
本研究はオーストラリアにおける成人移民英語プログラム(Adult Migrant English Program)の展開を移民の権利保障という観点から検討することを目的としている。特に、教材やカリキュラムの開発、およびさまざまな学習者に関する調査研究を行っている成人英語プログラム研究所(AMEP Research Centre)の役割、そして行政担当者への聞き取りなどを通して、「実際の教育現場でのプログラム運営」と、「運営上に必要となる研究活動」、そして「行政担当者」の三者がどのような形で共同しているのかという枠組みと背景にある理念を検討する。 本年は、理論研究およびオーストラリア政府発行文章の分析を行ったうえで、8月に成人英語プログラム研究所にて、所長を含む研究員のほぼ全員に対して聞き取り調査を行った。その結果、政府の意図が監督省庁の研究プロジェクト承認過程を通して表現されており、そのプロジェクトの結果が、専門的意見として監督省庁へ還流するという仕組みが見えた。関係各者の研究上の優先課題や研究方法などの理念の違いが大きくなると機能しなくなるという危険性があることがわかった。この知見は日本社会教育学会第55回大会(和歌山大学)にて発表した。 また、移民のシティズンシップ取得過程に導入されているフォーマルテストの存続是非をめぐる議論を日本の状況と比較しながら、国家・国民アイデンティティの形成という観点から論じた「オーストラリア人になるためのテストシティズンシップテストに関する論争の考察」(早稲田大学オーストラリア研究所編『オーストラリア : 多文化化する日本への提言』(仮題)オセアニア出版から2009年5月ごろ出版予定)を発表した。 来年度は、行政担当者への聞き取り調査を行い、どのような立場から移民に対する英語教育を行っているのか、理念や意思決定の仕組みなどを検討したい。
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