2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730552
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
影山 和也 Aichi University of Education, 教育学部, 講師 (60432283)
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Keywords | 数学教育 / 認識論 / 図形学習 / 授業構成 |
Research Abstract |
H20年度の主な目的は次の通りであった : (1) フランス教授学を始めとする国内外の数学教育学研究の知識の捉え方を整理・検討すること (2) 多様な研究パラダイムに立った際の数学授業作りへの示唆を検討すること (1) の検討を通して, 数学授業を社会的営みと見なした場合, 授業のなかには私的および公的知識が共存していること, 授業の流れのなかで数学的な知識の性格(考察のための道具, 他者説得の根拠など)も刻々と変化し, それは授業の状況に応じる学習者の問題意識に強く依存していることなどを指摘した。次いで(2) の検討を行いながら, 特に授業のなかで行われる正当化に着目し, 心理的-数学的, 個人的-社会的の2軸を持つ枠組みを作成した。従来の数学授業研究では, 例えば「問題提示-個人解決-集団解決-まとめ」のように, 教師によって提示された問題を学習者が解決する過程と授業の流れとが対応していると見なされているが, これはともすると授業がこの流れに沿えばよいという形式に陥ることにつながり, 授業の流れのなかでどのような数学的な知識が議論されるのかが見えにくいという問題点を抱えている。上記のように作成した枠組みによれば, 当初は私的であった学習者個々の知識が, 公的性格を帯びかつ授業の参加者が納得できるという意味での数学的知識へと変容する, いくつかの段階が存在することが指摘される。それらの段階は何をきっかけとして移行するのかといった教授学的示唆の検討は次年度以降の理論-実証の弁証法的考察のなかで行うことになる。
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