2011 Fiscal Year Annual Research Report
G.S.ホールの児童研究と特別な教育的配慮の理論と実践に関する史的研究
Project/Area Number |
20730563
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
千賀 愛 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10396335)
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Keywords | 児童研究 / G.S.ホール / アメリカ合衆国 / 特別学級 |
Research Abstract |
平成23年度は、第一に、クラーク大学児童研究所の設立の過程と初期の取り組みを(1)開設の経緯、(2)予算と運営、(3)教育・相談活動の側面から検討した。分析した史資料は、クラーク大学発行の"The Pedagogical Seminary"(以下、PE)、クラーク大学図書館の貴重資料室に所蔵される1908-1914年の理事会年報(Trustee Annual Report)、G.S.ホール史料集(G.S.Hall Papers)に含まれる関係者の往復書簡、児童研究所の関連資料、"University Register"等である。その成果の一つとして、2011年11月6日に日本特別ニーズ教育学会(於福岡教育大学)において学会発表を行った。また第二の検討課題として、20世紀初頭のアメリカ合衆国における学習困難児を中心とする特別学級・補助学級の対象児に関する実態把握の方法を中心に検討し、フランスから紹介されたばかりのビネーテストが、どのように議論され、実際に活用されていたのかを明らかにすることを目的とし、1910年代以降のアメリカの教育関係の報告書や特定市域の実践的な報告の分析を行った。この課題については、共著論文「20世紀初頭のアメリカとスウェーデンにおける特別学級・補助学級に関する検討-学習困難児の実態把握の方法を中心に-」として論文執筆し、2012年3月に原稿提出した。2012年8月発行予定の北海道教育大学紀要第63巻1号に掲載される見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、10月になるまで科研費の予算額が3割カットされる可能性があったため、資料収集のために渡米する準備をすることができず、国内にある資料や海外の資料を取り寄せる等の方針を変更して研究にあたった。しかしアメリカの資料の一部(例えば連邦政府レベルの報告書)は、デジタル化が進んでおり、これまで現地でしか入手できなかった資料を日本でも入手する環境が整ってきた。しかしながら、ボストン市やウスター市などの個別の地域に関する教育委員会等の報告書については、なお現地の公立図書館や地元大学の図書館において資料を収集する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、児童研究の先駆者であるホールを中心とするクラーク大学の児童調査・研究が同大学の地元であるマサチューセッツ州Worcester市を含むアメリカ東部の公立学校における特別な教育的配慮の実践と理論の形成にいかなる影響を与えたのかを明らかにすることを課題として取り組んでいきたい。またウスター市の特別学級に関する分析もあわせて行っていく。
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