2012 Fiscal Year Annual Research Report
G.S.ホールの児童研究と特別な教育的配慮の理論と実践に関する史的研究
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20730563
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
千賀 愛 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10396335)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | 児童研究 / クラーク大学 / アメリカ合衆国 / G.S.ホール / 特別学級 / 遅滞児 |
Research Abstract |
本年度は、2つの課題に取り組んだ。一つ目は、20世紀初頭のアメリカ合衆国とスウェーデンにおける学習困難児を中心とする特別学級・補助学級の対象児に関する実態把握の方法を中心に比較検討し、フランスから紹介されたばかりのビネーテストが、どのように議論され、実際に活用されていたのかを明らかにすることを目的とした。 1910年代以降のアメリカ・スウェーデン両政府の教育関係の報告書や特定市域の実践的な報告の分析を通して、当時の遅滞児や学業不振児がビネーテストを含む様々な実態把握の方法が議論され、実際に活用されたことで、特別学級・補助学級の実践にも少なからず影響を与えたことが明らかになった。この内容については、北海道教育大学紀要(2012年9月発行予定)に「20世紀初頭のアメリカとスウェーデンにおける特別学級・補助学級に関する検討―学習困難児の実態把握の方法を中心に―」として掲載予定である。 本年度に取り組んだ2つめの課題は、1909-1914年のクラーク大学児童研究所におけるG.S.ホールの役割と遅滞児への相談活動を明らかにすることを目的として検討を行ったことである。具体的には、(1)児童研究所の組織と運営におけるG.S.ホール、(2)地元教師への研修内容、(3)遅滞児への相談活動の視点から検討を行った。分析した史資料は、1910年前後における児童研究に関する報告書、往復書簡を含むクラーク大学図書館の貴重資料室に所蔵されるG.S.ホール史料集および同大学の記録などが中心である。この内容については、現在、査読付き学会誌『特殊教育学研究』に投稿し、審査中となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は11月に出産することになり、海外での資料収集ができず、やや計画が遅れている。しかし、9月に発行予定の論文「20世紀初頭のアメリカとスウェーデンにおける特別学級・補助学級に関する検討―学習困難児の実態把握の方法を中心に―」(北海道教育大学紀要)の執筆を行い、同時期のスウェーデンの補助学校・学級との比較を通して、アメリカの特別学級に関する考察を行ったことは一つの成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
育児休業終了後の平成25年度4月以降には、引き続きクラーク大学児童研究所におけるG.S.ホールと遅滞児の相談・研修活動の分析を進めるとともに、G.S.ホールの教育学論文の分析にも着手する予定である。これまで遅滞児の相談活動や遅滞児を担当する教師の研修活動などを行ってきたホールが、1900-1910年半ばの時期に執筆した主要な著書・論文のなかで、学校教育に対してどのような見解をもっていたのか、明らかにしたい。具体的にはEducational Problemsを中心に分析する。また、クラーク大学児童研究所に直接関わっていた担当者が執筆した論文を検討することによって、クラーク大学児童研究所の設立後の展開についても明らかにしたいと考えている。
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