Research Abstract |
本研究では, LDやADHD等の発達障害児の支援について, 科学的根拠にもとづいた方法を探究することを目的とした。さらに, これらの実践研究成果の積み重ねにより, 彼らの障害の克服を目指した「自立活動」教材を開発することも目的とした。上記の目的を達成するために, 初年度においては通級指導教室の対象となる書字障害の児童に対して, 漢字書字支援を実施した。対象児童は聴覚優位で書字運動に困難がみられたケースであり, そのような児童に音声言語を利用した支援を実施したところ, 半数以上の学習漢字が書字できるようになった。なお, この研究の成果は国内の学術雑誌に掲載された。さらに, ADHD症状を示す児童に対しても, 認知アセスメントに基づく社会性支援を実施した。注意やプランニングの力が評価できるDN-CAS(前川ら, 2007)を導入し, 認知アセスメントと行動所見からプロフィールを作成し, CPTなどの神経心理学的検査を組み合わせて総合的に評価した。さらに, 脳科学的視点によるアセスメントを行なうため, 2chの携帯型脳血流測定装置(NIRS)を使用し, ADHD症状と深く関わる前頭葉機能計測を実施した。これらアセスメントに基づいて, 児童が抱えている社会性の困難さを克服するために, 個別のソーシャルスキル支援を実施した。支援実施後, 再度上記のアセスメントを実施し, 支援効果の検証を試みた。その結果, 支援後に通常学級での振る舞いについてSST尺度の評価点が大幅に上昇し, DN-CASのプランニングも有意に上昇した。さらに, 持続的注意の評価であるCPT検査でも高い正答率を維持し, CPT実施中の前頭領域の脳血流も両側性の活性化が観察された。この研究成果は国内学会で発表され, 現在投稿準備中である。
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