Research Abstract |
本研究の目的は, 第1に, 多様な障害を併せ有する重度・重複障害児を対象として, 彼らが表出した行動を確定し, その意味を見出すこと, 第2に, 彼らが表出した行動を糸口とした双方向性のやりとりに基づく関係性の形成の実現を図り, その特性を記述するとともにそこに関与している諸条件を明らかにすることであった. 本年度は, 3事例(超重症児1事例, 重度・重複障害1事例, 肢体不自由を主とする重複障害1事例)への教育的対応を継続するとともに, 1事例(超重症児)の経過を分析, 検討した, 岡澤・川住(2008)の研究では, 当初, 身体の動きが全く見出されなかった超重症児への教育的対応の経過を整理した. 結果では, 本児に対して実行された係わりの内容と方針を整理した, 結果に基づき, 身体の動きが極めて微弱微細な超重症児への係わりの展開のあり方について以下のように考察した, 係わりの内容は, 本児が受信可能な感覚系と発現可能な運動系とを考慮し, 本児に見出された状態変化を糸口として着想, 実行され,展開することができたものであった, すなわち, 周囲の状況変化や筆者らの係わりと本児の状態変化との関連性に絶えず注意を払い, 本児の状態変化に関与していると思われる条件を見出し(あるいは仮定し), そこで見出された(仮定された)条件を組み込んだ係わりの内容を実行し, その際の本児の状態変化から係わりの妥当性を検討するという流れのなかで係わりは展開した. また, 本児への係わりにおいては, 特に, 左手に見出された動きを係わりの方向性を定める大きな糸口の1つとしてきた. こうした状態変化に応じて, 係わりの内容を実行, 継続あるいは終了して他の係わりに切り替えた, 超重症児への係わりは特に臨機応変に実行, 調節される必要がある. また, 現在, 教育的対応を継続している重度・重複障害3事例の経過を整理, 分析中であり, 次年度以降, 適宜, 論文として発表する予定である.
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