Research Abstract |
3年間の研究計画の2年次に当たり,研究の対象となる3事例(超重症児1事例,重度・重複障害1事例,肢体不自由を主とする重複障害1事例)について,大学における教育相談あるいは対象児の所属機関への訪問により行動観察および教育的対応を重ね,対象者のコミュニケーション行動および係わり手である筆者との関係性の成立・拡大に関し,主としてビデオ映像により記録を収集した.映像資料は,1セッションあたり,各々1時間30分から2時間程度であった.教育的対応の頻度は,各々の事情によって異なっており,超重症児事例(事例1)は週に1回,重度・重複障害事例(事例2)は数カ月に1回,肢体不自由を主とする重複障害事例(事例3)は月に1回程度であった.今年度,事例1については40回分,事例2については3回分,事例3については8回分の教育的対応に関する映像資料が得られた.こうした資料に基づき,現在,各々の事例に関して,対象者のコミュニケーション行動の変化および筆者との関係性を中心に,平成21年度の経過を整理するとともに,平成22年度に実施する教育実践の内容・方法を検討している.事例1は,常時,人工呼吸器を装用し頻回の痰の吸引を要し,経管栄養であるなど継続的で濃厚な医療的ケアを必要とし,寝たきりで自発的な移動や寝返りはできず,自発的な運動も乏しいが,周囲の視覚的,聴覚的変化に関連する眼球や口元の動きなどの表情変化や眠気や身体状態の不快感に関連すると思われる不快様の発声行動がある.事例1とは,本児の微弱な右手の動きの発現を手掛かりとした共同的活動の成立を試みている.そのなかで,活動の進展において本児の右手の動きが頻回になる傾向と筆者への視覚的接近行動との関連を検討している.事例2とは,対象者が所属する施設において,約9年間にわたり食事場面における教育的対応を継続しているが,今年度は,週に数回の係わりを持っていた教育的対応の初期に形成された筆者との関係性が,その後,係わりの頻度が数カ月に1回に減少しても保たれていることを示すエピソードが得られている.事例3は,不安定ながらも歩行が可能であり,コミュニケーションにおいて音声言語による発信はないが,特定の音声言語の受信が可能である.教育的対応の経過では,筆者との関係性の拡がりと双方向性のやりとりとの関連を示唆するエピソードが得られている.
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