2008 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリアのトランジションにおける学校教育機能 : 福祉、雇用との連関
Project/Area Number |
20730567
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山中 冴子 Saitama University, 教育学部, 准教授 (90375593)
|
Keywords | オーストラリア / トランジション / 経済合理主義 |
Research Abstract |
現在のオーストラリアにおける障害生徒のトランジション支援は、学校教育段階で取り組みのWelfare to Workの経済合理主義的障害者施策にどうつなぐのが重要なポイントとしてある。 トランジション支援の理念そのものは、子どもから大人への発達支援としての側面が極めて重要であるとともに、障害生徒のニーズに合わせた地域での生活を保障するための広範な取り組みが目指される。これと一見相容れない経済合理主義が合致できた背景について、今年度は1970年代から1980年代の連邦政府レベルの教育並びに福祉の施策動向から検討した。 1970年代初頭、教育の機会均等をキーワードに、連邦政府として初の障害児教育施策が振興されたが、障害生徒め学校教育修了後の実態は学校施策振興の限界を浮き彫りにした。これを受けて、1980年代に入る頃には「一生涯」という視点や「キャリア教育」の視点を導入しつつ、障害生徒の成人期を曹かにするための策が学校内外で促された. とりわけその支援方法については、職業リハビリテーションの分野が大きく貢献した。この時点で、成人期における「働く」の意義やその保障の在り方、更には学校と職業リハビリテーションの連携の在り方についての論点が浮上し始めるのだが、このあたりをじっくりと政策的に議論することなく、1980年代後半には国家経済の悪化を理由に、教育及び福祉施策が経済合理主義への大きく傾いていった。機会均等を最大の理念として掲げる連邦学校審議会と、政府が肝いりで別に設置した「教育と職業について、調査委員会」は教育観から対立したが、結局は後者の見解が施策化され、連邦学校審議会は廃止された。一方福祉施策においても根底に経済合理主義をもち、アメリカの研究者が施策策定段階で招かれ、自立生活運動と消費者としての障害者像並びにサービスの在り方が導入された。このように、教育施策並びに福祉施策の抜本的転換が同時期に起こり、社会参加という言葉で双方が連関させられ、トランジション支援の在り方を規定する道筋がつくられたと考えられる。
|