2010 Fiscal Year Annual Research Report
多変数保型形式の空間上のヘッケ作用素の明示的跡公式
Project/Area Number |
20740007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若槻 聡 金沢大学, 数物科学系, 助教 (10432121)
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Keywords | 代数学 / 整数論 / 保型形式 / 跡公式 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多変数保型形式の空間上のヘッケ作用素の跡について計算可能な明示的公式を与えることである。そして、その公式の応用として、多変数保型形式の空間の構造と保型L関数の性質を研究することであった。我々は主に2次のジーゲルカスプ形式の空間上のヘッケ作用素に対する明示的跡公式を研究している。もし自明な作用のヘッケ作要素を考えたならば、その跡は空間の次元となる。すでに我々は計算可能な次元公式を得ている。今年度の成果について述べる。まず次元公式と局所新形式の理論を用いてアーサー予想に関連した2次のジーゲルカスプ形式の空間の構造を研究した。次元公式によって空間の次元の関係式が非負の偶数になることを証明した。これより、ある局所表現をもつ一般タイプのジーゲルカスプ形式が必ずペアで現れることが推測される。これはアーサー予想が正しいことを示唆する数値実験にもなっている。次にパラモジュラー群についてのAtkin-Lehner involutionと呼ばれるヘッケ作用素の跡に関する疑ユニポテント元の寄与を、Labesse-LanglandsのSL(2)の跡公式におけるユニポテント元の寄与の安定化の技術を用いて研究した。目的である寄与の明示的計算には清水L関数とよばれるヘッケL関数の一種の特殊値が現れる。清水L関数の特殊値はヒルベルト保型形式の次元公式に現れため、従来から良く研究されており、主要な場合についてのその特殊値はHammond-Hirzebruchにより計算された。Labesse-Langlandsのユニポテント項の安定化は彼らの計算手法の一般化と見ることができ、実際に明示的計算に利用することが可能であることが分かった。
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Research Products
(1 results)