2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川ノ上 帆 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (50467445)
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Keywords | 代数幾何学 / 特異点解消 / 正標数 |
Research Abstract |
昨年度に引き続きIdealistic Filtration Program (IFP)に関する研究を行った。IFPとは正標数の代数多様体に関する特異点解消の問題を解決する為のプログラムであり、本研究者が提唱しPurdue大学の松木謙二氏と共同で推進しているものである。 特異点解消の問題は標数0の場合は完全に解決されており、その証明の鍵となるのが最大接触超曲面と呼ばれる局所超曲面の存在である。しかし正標数の場合は最大接触超曲面が必ずしも存在しない。そこで先頭生成系と呼ばれる任意標数で定義される概念を最大接触超曲面の代替物として導入し標数0の場合と同様のアルゴリズムを機能させようというのがIFPの骨子である。非特異と限らない超平面が登場する為、期待通りに機能する不変量やアルゴリズムを構成するのは標数0の場合以上に困難である。爆発を経る前については、既に上半連続な不変量とその最大軌跡としての非特異な爆発の中心の存在などを示しており、IFPは大変良く機能する。しかし未だに爆発後も十分に機能する決定的な不変量は得られていない。 前年度は不変量の候補と爆発を通じた増加の過程を精査し、困難の背後に隠れる原因を探った。平成22年度はこの分析を踏まえ二方向から不変量の修正を目指した。一つは低次元からのアプローチである。廣中平祐先生の過去の研究やVillamayor氏の最近の成果をIFPの枠組で再構成し全空間が3次元の場合のアルゴリズムを確定する方針で、松木氏を中心に研究を進めている。もう一方は標数0の特異点解消の精密化を通じたアプローチである。従来弱変換を用いて構成するアルゴリズムを狭義変換によって構成し直すことにより、正標数下でも爆発で増加しない不変量を定義するという方針で本研究者を中心に研究を進めている。残念ながら何れのアプローチも部分的進展はあるものの未だ出版するには至っていない。
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