2009 Fiscal Year Annual Research Report
非可換調和振動子のスペクトルゼータ関数の特殊値とモジュラー形式
Project/Area Number |
20740021
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
木本 一史 University of the Ryukyus, 理学部, 助教 (10372806)
|
Keywords | 非可換調和振動子 / スペクトルゼー関数 / パラメタ変形 / モジュラー形式 / 多重ゼータ値 |
Research Abstract |
本課題は、非可換調和振動子と呼ばれる常微分方程式系(調和振動子の組をパラメタ変形したもの)から定義されるスペクトルゼータ関数の特殊値の計算、および特殊値の記述の際に現れるアペリ型数列の背後にあると予想されるモジュラー性を明らかにすることを主たる目的とするものであった。それらは、平成22年度以降に行う科研費研究「表現論的構造のパラメタ変形から生じる特殊関数の研究」で引き続き研究を進める対象でもある。 ●21年度は本課題の最終年度に当たる。一つの総括となるものとして、これまでの研究成果に基づいて、国際研究集会「Casimir Force, Casimir Operators and the Riemann Hypothesis」(於・九大西新プラザ)にて招待講演を行った。その内容は査読付き報告集において出版される予定である。 ●変数および非可換調和振動子を定める2つのパラメタの比を固定した上で、スペクトルゼータ関数のパラメタによる展開を考え、その展開係数を実験的に計算した。これはBologna大学のAlberto Parmeggiani氏との議論を端緒とするもので、非可換調和振動子の構造を反映し良い性質を持つことが期待されるためである。しかし現時点で状況はまだ明確ではない。22年度以降の研究で明らかにしていきたい。 ●本研究と密接に関連し、次年度以降の科研費研究対象でもあるα行列式の表現論的問題に関して、次のことを示した:2次の量子α行列式(量子行列環の中心元であるq-行列式のパラメタ変形)の冪が量子包絡代数の作用によって生成する巡回加群において、ある既約表現が部分表現として現れるか否かが、超幾何多項式のある種のq-変形の零点であるか否かで決まる。この結果は論文として出版された他、京都大学数理解析研究所にて行われた研究集会や日本数学会2009年度秋季総合分科会において発表した。
|