Research Abstract |
当初の主な目的は, 前量子化可能な局所トーリックLagrangeファイバー空間について, Riemann-Roch数とBohr-Sommerfeldファイバーの個数が一致する現象を, 局所トーラス作用の観点から解明することであった. しかし, 研究を進めるうちに, この現象はDirac型作用素の指数の局所化として捉えるのが自然であると考えるに至った.そこで, 今年度, この観点から研究を進めた結果, 局所トーリックLagrangeファイバー空間のみならず, 全ての前量子化可能な特異Lagrangeファイバー空間に対して, Riemann-Roch数が非特異Bohr-Sommerfeldファイバーと特異ファイバーからの寄与で表せることが証明できた. 特に, 非特異Lagrangeファイバー空間については, 上記の現象が起きるメカニズムを指数の局所化の観点から解明することが出来た. また, ファイバー空間の全空間が曲面の場合に, 楕円型特異ファイバーからの寄与を直接計算した. 一方, この結果は, 特異ファイバーの近傍での局所化の精度が不十分であるため, トーリック多様体上の運動量写像など, 特異ファイバーが連続的に現れる場合に, 既知の結果を再現できない.この点を改善することが来年度の課題である. 上記の局所化の証明では, Lagrangeファイバー空間のファイバーに沿ったdeRham作用素の族を用いてDirac型作用素を摂動する. この摂動は強力な手段ではあるが, 人工的であるため, 幾何学的な意味が明確でない. そこで, 今年度は, この点について, 幾つかの具体例を考察した, その結果, この摂動はファイバー方向の計量を小さくするRiemann計量の変形と関係があることが徐々に明らかになってきた.来年度は, Riemann-Roch数とBohr-Sommerfeldファイバーの個数が一致する現象について, この計量の変形に関する断熱極限を用いた幾何学的なアプローチも試みたい.
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