2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740032
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小野 肇 Tokyo University of Science, 理工学部・数学科, 講師 (70467033)
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Keywords | 定スカラー曲率ケーラー計量 / トーリック多様体 / 漸近的チャウ安定性 / 二木不変量 / ヒルベルト級数 |
Research Abstract |
本研究の目的は、佐々木多様体の標準計量を2つの異なるケーラー幾何(横断的ケーラー構造及びケーラー錐構造)を通して研究し、さらに弦理論において現在活発に研究されている「AdS/CFT対応」の数学的な理解を得ることである。そのためにはケーラー幾何のさらなる理解が重要である。そこで本年度はケーラー幾何だけからは得られない「佐々木幾何的な手法」を用いて、ケーラー幾何の問題を解決することを試みた。その結果、ケーラー幾何で予想される「多様体版小林・ヒッチン対応」(標準ケーラー計量の存在と幾何学的不変式論の意味での安定性の等価性)に関して新たな結果を得た。まず、AdS/CFT対応の研究(Martelli-Sparks-Yauによる、佐々木・アインシュタイン計量の体積最小性)において、トーリック佐々木多様体のヒルベルト級数の主要項の微分と佐々木・二木不変量との関係が指摘されていたが、より一般に、トーリックファノ多様体を変形して得られるトーリック佐々木多様体においては、ヒルベルト級数の微分はある積分不変量の族と等価な情報を持つことを示した(二木昭人氏、佐野友二氏との共同研究。)この積分不変量の族は、regularなトーリック佐々木多様体の場合、つまり、トーリックファノ多様体においては、漸近的Chow半安定性のための障害を与える。このことを用いて、漸近的Chow不安定な7次元コンパクトトーリックケーラー・アインシュタイン多様体が存在することを示した(佐野友二氏、四ツ谷直人氏との共同研究。)このように、標準ケーラー計量を持つが、幾何学的不変式論の意味で不安定な例は今まで存在が知られていなかったものである。
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Research Products
(4 results)