Research Abstract |
今年度前半は,研究実施計画の項目B,すなわち「例外ホロノミーをもつRiemann多様体に関するLeBrun-Mason型理論の構築」に関する研究を行った.具体的にはS.SalamonやR.Bryantによる文献のサーベイを行い,対応するLeBrun-Mason型理論の構築の可能性を探った.その結果,目的の理論を展開できる可能性と,その将来性を見出すに至ったが,これを実現するには実施計画の項目A.1「特異性の理論」を確立しておく必要性が生じ,本格的な研究に入るには時期尚早であると判断した.現在のところ,この方向における新しい結果は得られていない. 今年度後半は,D.Joyceや藤木明氏によるJoyce計量やその簡約の理論に関し,対応するLeBrun-Mason型理論を構築するための研究を開始した.これは研究計画の項目A.1,A.2に属する内容である.現在までのところ,以下の結果を得ている 1.不定値版のJoyce方程式の解からノンコンパクト多様体上の不定値Einstein-Wey1構造を構成,また,これが実現するための臨界条件を決定 2.不定値版のJoyce方程式の解が,波動方程式の回転不変な解と1:1に対応していること,その解が常に積分表示を用いて表示できることの証明 3.次数2のHirzeburch曲面に関し,その上の正則円板の族の変形の理論の構築 4.上記を関連付けるLeBrun-Mason型対応の構築 以上の内容については,関数の微分可能性や,無限遠でのふるまいについてさらに研究を深めたのち,論文として発表するつもりである.なお,この結果は上記の例外ホロノミーの理論の簡易版と位置づけることもでき,その研究のための一里塚となるものである. また,昨年度から今年度の研究を踏まえ,波動方程式の理論との関係がより深まってきた.これを受け,微分方程式の専門家である田村充司氏(東京理科大・理工)とのセミナーを12月より開始し,継続している.
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