2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 慎一 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (00372558)
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Keywords | リーマン幾何 / 最適輸送 / フィンスラー幾何 / 熱流 |
Research Abstract |
今年度の研究では, フィンスラー多様体上の熱流の挙動とWasserstein空間のフィンスラー構造について, 主にボン大学のKarl-Theodor Sturm氏との共同研究により, 以下の成果を得た. フィンスラー多様体は各接空間に(ミンコフスキ)ノルムを伴った多様体である. その研究はノルムが内積で与えられる特別な状況であるリーマン多様体に比べて困難であり, あまり進んでいない部分も多い. 例えば, フィンスラー多様体で自然に定まるラプラシアンは(リーマン多様体でない限り)非線形作用素であり、対応する熱方程式は非線形な発展方程式である. その解, すなわち熱流は, ソボレフ空間上のディリクレエネルギーの勾配流として実現できるが, それは高い滑らかさを持ち得ず, 連続的2階微分可能ですらない. 我々はその連続的1階微分可能性と、更にその微分がヘルダー連続であることを示した. また, Otto流のWasserstein空間のフィンスラー構造と, Benamou-Brenier流のWasserstein距離の表示を用いることにより, 熱流はWasserstein空間上の相対エントロピーの勾配流とも見なせる. 以上の議論の流れと使われる技法は, 基本的にはリーマン多様体の場合と共通のものであるが, 要所で筆者によって導入されたフィンスラー多様体の重みつきリッチ曲率と, その下からの評価と曲率次元条件、(Wasserstein空間内のエントロピーの凸性)の同値性を用いている. 関連する結果として, リッチ曲率を下から押さえたときの距離関数のラプラシアンの比較定理も得た.
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Research Products
(6 results)