2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740036
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 慎一 Kyoto University, 理学研究科, 准教授 (00372558)
|
Keywords | リーマン幾何 / フィンスラー幾何 / 最適輸送 / 熱流 / 曲率 |
Research Abstract |
今年度の研究で得られた成果のうち,ふたつについて述べる.ひとつは,フィンスラー多様体の重みつきリッチ曲率に関する研究である.これはフィンスラー多様体とその上の任意の測度の組に対して筆者によって導入された概念であり,任意の測度からはじめる理由は,一般のフィンスラー多様体には良い参照測度を構成的に作ることが出来ないため,としていた.今年度の研究では,これを裏付ける結果として,良い参照測度を許容しないフィンスラー多様体が実際に存在することを示した.具体的には,Randers空間というフィンスラー多様体の族について良い参照測度が存在するための必要十分条件を求め,それを満たさない例を挙げた. ふたつ目は,アレクサンドロフ空間上の確率測度のなす空間(Wasserstein空間)内の勾配流についての,ボン大学のNicola Gigliとの共同研究である.このような空間上の凸関数の勾配流の性質は,筆者によって以前調べられたが,その結果の幾つかは底空間を非負曲率空間に限っていた.Gigliとの共同研究では,これらを曲率が負定数以上の空間に拡張し,理論を完成させた.具体的には,アレクサンドロフ空間上のWasserstein空間内の勾配流の収縮性と一意性,リーマン多様体上のWasserstein空間内の相対エントロピーの勾配流と熱流の一致などを示した.前者は,曲率次元条件(相対エントロピーの凸性)と組み合わせることで,アレクサンドロフ空間の熱流の研究への応用が期待できる.
|