2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 慎一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00372558)
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Keywords | リーマン幾何 / フィンスラー幾何 / 最適輸送理論 / 熱流 / 曲率 / エントロピー |
Research Abstract |
今年度の研究で得られた3つの成果について順に述べる.1つ目は,申請書で触れていた,情報幾何に現れるエントロピーの,確率測度のなす空間(Wasserstein空間)での凸性に関する研究である(高津飛鳥氏(名古屋大学)との共同研究).通常の相対エントロピーの凸性がリッチ曲率の非負性と同値であるのと異なり,このエントロピーの凸性はリッチ曲率の非負性だけではなく,重み関数の凸性との組み合わせで特徴づけられる.また,このエントロピーの勾配流は(重みつき)多孔質媒質流と一致する. 次に,同じく申請書で触れていたバナッハ空間上の勾配流の研究について,Karl-Theodor Sturm氏(Bonn大学)との共同研究により,ユークリッド空間ではないバナッハ空間上の熱流は非拡張でないことを示した.熱流は相対エントロピーの勾配流であり,また,ユークリッド空間やバナッハ空間では相対エントロピーは凸である.ユークリッド空間ではこれらの性質より熱流が非拡張であることが導かれるが,バナッハ空間で同様のことが云えるかは未解決であった.我々の否定的な解決により,非拡張性には「リーマン構造」が本質的に必要であることが明らかになった. 最後に,Nicola Gigli氏(Nice大学),桑田和正氏(お茶の水女子大学)とのアレクサンドロフ空間上の熱流の研究について述べる.この研究では,ディリクレエネルギーのL^2空間での勾配流として構成されていた熱流が,相対エントロピーのWasserstein空間での勾配流と一致することを示した.証明では従来の方法とは逆に,熱流が相対エントロピーの勾配流になることを示した.この手法は空間の微分構造への依存度が低く,リーマン多様体などでのこれまで知られていた証明よりも簡略化されている.また,Wasserstein幾何とディリクレ形式の理論を組み合わせることで,Bakry-Emery型の勾配評価や熱核のリプシッツ連続性などの応用が得られた.
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Research Products
(8 results)