Research Abstract |
今年度の成果は大きく分けて以下の3つである. 1.出次数一定の有限有向グラフに道路着色を施すと整数径数乱歩が対応する.この乱歩がいつ駆動過程について可測かという問題を考察した.この問題は半群作用を持つ空間上の離散時刻ツィレルソン方程式の特別な場合と考えられる.その結果,道路着色が同期性を持つことが必要十分条件であることを見出した,同期性を持たない場合に駆動過程と具なる蓋然性が生ずる原因は,コンパクト群の場合と概ね同様であることもわかった.また,混合的マルコフ連鎖はいつも同期性を持つ道路着色乱歩によって実現でき,また置換一様性を持たなければエントロピーが増すことも示した(安富健児氏との共同研究). 2.二つの処罰問題がいつ共通のシグマ有限測度によって統合されるかという問題を考察した.その結果,重みで変換した過程に対する調和関数の漸近挙動によって特徴付けられることを見出した.この結果の重要な具体例として,一次元狭義安定レヴィ過程の場合を調べ,局所時間処罰と最大値処罰とが,スペクトル的に負のときは統合され,そうでないときは極限測度が特異であることを示した. 3.処罰問題を統一するシグマ有限測度は後続マルコフ性を持つ.後続マルコフ性を持つ測度の全体がなす凸集合において,端点性が,既約性,極小性,エルゴード性のいずれとも同値であることを示した.さらに,ブラウン最大値処罰問題を統一するシグマ有限測度が端点性を持つことを,三次元ベッセル過程のエルゴード性より示した.これと並行する問題として,周遊測度の問題も考察した.初期マルコフ性を持つ測度の全体がなす凸集合において,端点性が,既約性,極小性,萌芽の自明性のいずれとも同値であることを示した.さらに,Douglas-Naimarkの定理との関係についても考察中である(Yor氏との共同研究).
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