2008 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散系の解による時空パターン形成の基本構造を探る
Project/Area Number |
20740087
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 香奈子 Tohoku University, 国際高等研究教育機構, 助教 (10451519)
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Keywords | 反応拡散系 / パターン形成 |
Research Abstract |
本研究では, 反応拡散系において, どのような反応がどのようなパターンを生み出すかを体系的に明らかにすることを目標としている. ギーラー・マインハルト系は, 活性因子, 抑制因子と呼ばれる二つの未知関数から成る非線形連立放物型偏微分方程式であり, 形態形成のモデルとして重要な役割を果たしている. 今年度は, この系に現れる基礎生産項に着目し, 基礎生産項が解の挙動と定常解の形状にどのように影響を及ぼすかを考察した. 基礎生産項とは, 単位時間当たりに細胞から生産される化学物質の量を表す項である. 主に次の3つに取り組んだ : 1. 方程式系が活性因子の基礎生産項を含まない場合, 活性因子の濃度が最終的にOになる現象(パターンの崩壊)が起こり得ることを証明した. 2. 抑制因子の基礎生産項が恒等的にOでは無い場合に, 活性因子の濃度がほとんどOに近いような定常解の存在を証明した. 3. 活性因子の濃度が領域の境界上ただ一点で最大となる定常解について, 活性因子の基礎生産項がこの定常解の形状にどのように影響するかを考察した. 1のパターンの崩壊は, パターン形成のモデルとしては期待されていない現象であるが,2の結果を併せると, パターンの崩壊を防ぐには"活性因子の基礎生産項は恒等的にOではなく,抑制因子の基礎生産項は恒等的にOとする"ことが効果的であることが分かった. さらに2の結果は, 方程式系に抑制因子の基礎生産項が正で含まれる場合には, 方程式系の構造がより複雑になることを示している.
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