2009 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散系の解による時空パターン形成の基本構造を探る
Project/Area Number |
20740087
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 香奈子 Tohoku University, 国際高等研究教育機構, 助教 (10451519)
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Keywords | 反応拡散系 / パターン形成 |
Research Abstract |
パターン形成の数理モデルとして重要な役割を果たす反応拡散系について,それらに現れる様々なパラメータに着目し,解の挙動や形状がそれらにどのように依存しているかを明らかにすることに取り組んだ.様々な反応拡散系の基本的構造を比較することで,新たなモデルの提唱や,多くの分野で見られる化学物質の反応によって生じる現象の仕組みの理解につながると期待している.今年度は,(1)ギーラー・マインハルト系の解の挙動の解明(結果は投稿中);(2)凝集現象を記述する方程式の解の挙動の解明(結果は投稿中);(3)肺がん発現のモデル方程式におけるパターン形成の構造解明;に取り組んだ. (1)では,二つの未知関数(活性因子と抑制因子)から成るギーラー・マインハルト系について,系に現れる基礎生産項に着目し,それらが解の挙動にどのような影響を与えるかを考察した.活性因子が空間パターン形成に失敗する現象(パターンの崩壊)について,抑制因子の基礎生産項は解のダイナミクスを複雑にし,パターンの崩壊を起こしやすくすることを示した.さらに,より一般の活性因子-抑制因子系を扱うことにより,パターンの崩壊はある種の系に普遍な現象であることを示した.(2)では,凝集現象(化学物質の濃度に反応して生物が集まる現象など)を記述する方程式について,現象を特徴づける反応項に現れる一つの関数に注目し,その関数がどのような性質をもつかで場合分けをし,解の存在と時間が十分経過したときの解の振る舞いについて考察した.多くの例を含む一般の方程式を扱ったことにより,似た方程式に共通の性質を統一的に理解することが可能となった.(3)では,ギーラー・マインハルト系の基である「拡散誘導不安定性」とは異なるアイディアでパターンの発現を考察しており,(1)での結果と比較しながら,パターン形成のメカニズム解明に取り組んだ.
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