2011 Fiscal Year Annual Research Report
空間非一様な非線型反応拡散方程式系がうみだす空間パターンにおける集中現象
Project/Area Number |
20740090
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 主恵 東京海洋大学, 海洋科学部, 准教授 (10318800)
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Keywords | 非線形反応拡散系 / 特異摂動問題 / 遷移層 / スパイク / 空間非一様性 |
Research Abstract |
Allen Cahn方程式とよばれるequal well depth型の双安定型応拡散方程式をノイマンゼロ境界条件で考える.この方程式は物理学における相転移問題,数理生態学などにあらわれる.申請者(2003, Journal of Differential Equations)は1次元区間上においてこの問題を考え,多重遷移層をもつ定常解の存在を示し,遷移層の配置および個数と解のモース指数(不安定指数)との関係を完全に解明した.これらの結果を空間2次元以上の場合に拡張することは多くの研究者によって試みられている.空間2次元以上の場合には,1次元の場合にくらべ遷移層の形状が多様で複雑になるため遷移層の様子を解析することは難しい.そこで領域を球対称に限り1次元の方法を改良し適用できるようにした研究がある.Dancer-Yan(2004)は,多重遷移層をもつ球対称定常解の存在と形状に関する結果を得,球対称定常解と1次元の解とは酷似した形状をもつことを示した.これに続きDu-申請者(2007, Journal of Differential Equations)は,Dancerらと同じ非線型項を考え,孤立遷移層(折り重なっていない遷移層)のみをもつ定常解のモース指数は拡散係数を無限小とするとともに無限大に発散することを厳密に証明した.この結果により,形状のそっくりな空間次元1次元の解と空間多次元の球対称解の安定性はまったく異なるものであることがわかった.領域を球対称などの特別な領域に限らず,多次元の一般の領域を扱った研究にはSakamoto-Nefedof(2001),Wei(2010),Li-申請者(2011,DCDS-A)などがある.Li-申請者(2011,DCDS-A)では遷移層のあらわれうる位置がある界面S近傍のみであることを証明し,実際にその近傍に安定遷移層を構成できることを示した.この界面Sは方程式系のもつ空間非一様性によつて決定されることも証明された.
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