2008 Fiscal Year Annual Research Report
退化特異性をもつ偏微分方程式の自由境界問題とその応用
Project/Area Number |
20740094
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
竹内 慎吾 Kogakuin University, 工学部, 准教授 (00333021)
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Keywords | 退化特異性 / pラプラス作用素 / 自由境界 / 解析学 / 関数方程式論 / 非線形拡散 |
Research Abstract |
20年度の研究実施計画では, pラプラス作用素を拡散項とする拡散ロジスティック方程式について, 解がある領域上で環境収容力と一致するためには環境収容力がp調和であることが必要十分であることを空間1次元の場合に証明した論文が投稿中であると記した(しばらくしてこの論文は受理された : Differential and Integral Equations 22 (2009), 587-600). 非定数関数との一致集合が存在すればその上でpラプラス作用素に退化特異性が現れないのでほぼラプラス作用素とみなせ, それがゼロであり同時に反応項が特異性(非リプシッツ連続性)とともにゼロになれば, 実際に一致集合が存在することが予想される. 論文ではそれを肯定し. 数箇所での研究発表を行った. pラプラス作用素に関して, 非定数関数との一致集合が研究された例は, 例えば障害物問題では坂口茂氏の研究があるが, 単なる境界値問題では本研究が最初であると思われる. 非線形作用素では解と環境収容力の差を評価することが困難になるが, (一致集合が存在するための必要条件である)環境収容力がp調和であることを活かして解決出来た. 空間多次元の場合のこの問題は1次元の場合と異なり, 解の勾配に関する有界性評価を得るのが困難で, 小さい進展はあるものの解決するには至らなかった. 有界性評価が得られたとしても, 1次元のときにもちいたDiaz-Veronの局所エネルギー法に基づく証明はある範囲のパラメータにのみ適用可能であることがわかってきた. これは局所エネルギーに現れる境界積分を評価する際, 1次元では境界積分が境界値の和となり, ヘルダーの不等式に代わりイェンセンの不等式が適用できることに起因している.
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