2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 建 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (80431782)
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Keywords | 理論天文学 / 宇宙物理学 / 計算物理 / 磁気流体 / 乱流 / 波動 / 恒星風 / 降着円盤風 |
Research Abstract |
本研究の目的は、主に数値シミュレーションの手法を用いて磁気流体乱流の基本的性質を用いて理解することである。当初の予定では、圧縮性の効果や密度勾配の効果などを、ある程度理想化した状況下で解析することを予定していた。しかしながら、数値シミュレーションコードのテストの1つとして降着円盤の計算に取り組んだ際に、これまで注目されていなかった円盤風駆動機構が効果的に働き得ることを発見した。磁場が存在する降着円盤では、磁気回転不安定性などにより磁気乱流状態となり、この磁気流体乱流が角運動量輸送や質量降着に主体的な役割を果たすことがこれまで知られていたが、さらにこの磁気乱流が円盤の上下面からの物質の流れ出し-すなわち円盤風の駆動-を引き起こすことが新たに判明した。この機構は、原始惑星系円盤やブラックホール周囲の降着円盤など様々な天体で働き得る重要な過程であることが予想されるものの、これまであまり詳細に調べられていなかった。そこで当初の予定を若干変更して、磁気流体乱流による円盤風駆動機構を精査することにした。降着円盤の一部分を取り出した局所的な3次元磁気流体計算を行う。降着円盤内の差動回転や、上下面からの円盤風の流れ出しをシミュレーションの境界条件として適切の考慮し、初期に弱い磁場(ガス圧に比べ磁気圧が小さい)を与え、シミュレーションを開始する。磁気回転不安定性により円盤内の磁場が増幅し、この乱流磁場によるポインティング流束により物質が上下面から流れ出すことが見てとれた。さらに円盤風の質量流東の関係なども調査し、若い恒星周囲に形成される原始惑星系円盤のガス成分の散逸へと応用し、これまで主要過程と考えられていた輻射機構に比較しより大きな影響を与えることを指摘した。この成果はSuzuki & Inutsuka(2009)として発表した。ここまでは降着円盤の局所部分に関する議論であり、より具体的な天体現象に応用するには大局的な円盤の時間進化を調べる必要がある。この時点で平成20年度の終盤となっていたが、大局円盤の調査までを一連の研究とすることが強く望まれたため、平成20年度分の研究経費を繰り越し平成21年度に渡り使用することとなった。大局的な円盤の計算結果は平成21年9月頃ほぼ出揃い、この成果は現在査読論文雑誌に投稿中である。
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Research Products
(5 results)