2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740114
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
青木 和光 National Astronomical Observatory of Japan, 光赤外研究部, 助教 (20321581)
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Keywords | 元素合成 / 超新星爆発 / 低金属星 / 分光観測 / 銀河系 |
Research Abstract |
自然界に存在するアクチノイド元素(トリウムおよびウラニウム)はすべて爆発的元素合成(rプロセス)で合成されたものであるが、これに対応する天体現象が特定できす、元素合成の機構も不明な状況である。観測的にこの問題に迫るために、これまでは太陽系組成の詳細な解析と、宇宙初期のrプロセス元素合成の結果がよく保存されている、極めて低金属の星についての観測が行われてきた。本研究は、低金属星の観測を拡張し、太陽系組成が形成されるまでの銀河系における重元素の蓄積過程を観測的に明らかにするために、すばる望遠鏡を用いてスペクトル観測を実施し、これまでにカバーされていなかった幅広い金属量領域(太陽の数分の1から100分の1程度)の星について、rプロセスを代表するトリウムとユーロピウムの組成を決定することに成功した。その結果、これらの元素の組成比は、金属量の増加とともに分散が小さくなることが確認された。これは銀河系形成の進行に伴って星間物質がよく混合されることにより、個別の天体現象(おそらく超新星爆発とみられる)でつくられる組成比の分散が見えなくなった結果と解釈される。また、トリウム・ユーロピウム比は平均として太陽系における組成比よりやや低いことも明らかになった。これは放射性元素であるトリウムの崩壊がより進行していると解釈でき、観測された銀河系ハローおよび厚い円盤構造の星が高年齢であることが示唆される。同じデータセットから測定された鉛(もう一つの重元素合成過程であるsプロセスを代表する)の組成からは、太陽系組成の20分の1以下の金属量領域ではsプロセスの寄与が小さいことも確認された。以上をまとめると、これまで研究例が少なかったトリウムと鉛の組成の測定を拡張することにより、rプロセスで合成されるトリウムの組成比は、平均的には太陽系組成からの推定と概ね一致すること、銀河系ハローと厚い円盤の星の重元素は専らrプロセスで供給されたことが明確になった。
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