2008 Fiscal Year Annual Research Report
多次元輻射磁気流体シミュレーションによる超巨大ブラックホールの形成過程の研究
Project/Area Number |
20740115
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
大須賀 健 National Astronomical Observatory of Japan, 理論研究部, 助教 (90386508)
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Keywords | ブラックホール / 降着円盤 / 磁気流体シミュレーション / 輻射輸送 |
Research Abstract |
ブラックホールが成長するメカニズムはガス降着である。したがって、超巨大ブラックホール形成の問題を解決するには、ブラックホール周囲のガス降着・噴出流の研究が必要不可欠である。そのため、輻射磁気流体力学の数値計算法を開発・改良し、大型並列計算機を用いて実行した。研究の第一歩として、ここでは2次元軸対称、赤道面対称を仮定し、輻射輸送はFlux-limited diffusion近似を採用して解いた。この研究は、ブラックホール周辺をターゲットとした世界初の大局的輻射磁気流体シミュレーションである。計算の結果、輻射圧優勢な分厚い大光度円盤、輻射冷却が有効に働く低温で薄い円盤、輻射冷却の効かない高温低密度円盤を再現した。従来の研究ではそれぞれの円盤を別々のモデルで説明していたが、本研究は一つの数値計算コードで三つの状態を再現することに成功したものであり、統一モデルの重要なステップである。また、いずれの円盤においても、ヘリカル磁場を伴うアウトフローが発生することを発見した。これは、活動銀河中心核やブラックホール連星の観測をうまく説明するものである。特に、輻射冷却の効く低温円盤からはアウトフローが発生しないというのが従来の理論モデルの預言であったが、これを覆す結果が得られた。しかも、この結果は最近のブラックホール連星のX線観測の結果と合致する。また、角運動量輸送の有力なメカニズムである磁気トルクが圧力とどういう関係になっているかも重要な研究である。従来のモデルでは、物理的根拠がないのも関わらず、圧力に比例するというモデルが広く採用されてきたからである。シミュレーションの結果を詳しく解析した結果、磁場がおよそ圧力に比例していることがわかった。この結果は、過去の理論研究に物理的根拠を与えるという重大な意味を持っている。
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Research Products
(2 results)