2008 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論における時空構造のホログラフィー原理を用いた解明
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20740132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 匡 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10432353)
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Keywords | 超弦理論 / 量子エンタングルメント / AdS / CFT / ブラックホール / 共形理論 |
Research Abstract |
20年度に行った研究は、(i)幾何学的エントロピーのAdS/CFTからの導出、(ii)3次元N=6超対称共形場理論とそのAdS/CFT対応の解析,(iii)AdS/CFT対応の分数量子ホール効果への応用の3つに分かれる。 まず、(i)では、従来のエンタングルメント・エントロピーを用いた解析では理解できなかった有限温度での相転移の記述を、時空を二回Wick回転して得られる幾何学的エントロピーを用いて、場の理論とAdS重力の双方より研究を行った。その結果、両者の計算で同様な相転移を確認できた。 次に(ii)では、最近見つかった新しいAds4/CFT3であるABJM理論(N=6超対称共形場理論)に関して研究を行った。とくにペンローズ極限においてそのAdS/CFTがどうなっているのか重力、ゲージ理論両側がら異常次元を計算し比較した。その結果、最も重要な4次元N=4超対称性ゲージ理論の場合と比べて状況が異なり、強結合と弱結合で非自明なスケーリングの破れが見つかった。これは、AdS/CFTと矛盾はしないが、この場合によりAdS/CFTが複雑で非自明なものであることを示している。また、この理論の背景を用いて、超弦理論におけるファジー球面が回転するとトポロジーが変わってファジートーラスになることも発見した。 最後に、(iii)では、このABJM理論の応用としてfractional braneを入れてパリティーを破り、量子ホール効果の低エネルギー有効理論を実現した。このモデルでは、ホール電気伝導度を、AdS/CFTを用いてホログラフィックに計算することができる。
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