2009 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論における時空構造のホログラフィー原理を用いた解明
Project/Area Number |
20740132
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 匡 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10432353)
|
Keywords | 超弦理論 / 量子重力 / ブラックホール / ゲージ理論 / 量子ホール効果 / 超伝導 |
Research Abstract |
高柳は、当該年度において、超弦理論で最近盛んに研究されているAdS/CFT対応を用いて物性物理に出てくるような量子多体系の解析を行った。AdS/CFTは、一言でいうと、ある時空上の重力理論とその時間的境界部分で定義されたゲージ理論の等価性であり、強結合で解析が難しいゲージ理論を、ずっと簡単な重力理論(一般相対論)に置き換えることができるので大変便利である。 まず、物性物理でとても重要な分数量子ホール効果を超弦理論でどのように実現できるか研究を行った。分数量子ホール効果は、ホール電気伝導度が分数で量子化される現象である。このような豊かな相構造は素粒子物理で通常考える場の理論には登場せず、このような現象を実現できれば、超弦理論の量子重力理論としての新しい側面が見えてくる可能性があり興味深い。我々は、分数量子ホール効果の相を一つ固定したときに、それをDブレインを用いてAdS/CFTの枠組みで初めて実現した。4次元反ドジッター空間上の重力理論と3次元超対称性Chern-Simons理論がAdS/CFT対応で等価になることが最近発見されたが、その重力解を用い、そこにDブレインを超対称性を保つように加えることで、端状態を超弦理論の立場で構成した。また、量子ホールの相転移を記述するためには、このAdS/CFT対応の系にフレーバーの自由度を導入する必要があるが、それがD6ブレインを用いて初めて実現した。 次に、通常の相対論的なスケール不変性とは異なり、非等方なスケール不変性を要求するとそのAdS/CFT対応がどのようになるか研究を行った。このような対称性は、磁性体や液晶などの物質で実現されることが知られ、理論的にも大変興味深い。我々は、そのようなAdS/CFT対応をTypeIIB超弦理論に埋め込むことができることを具体的な例を構成して示した。また、別なテーマとして、絶縁体と超伝導の相転移をAdS/CFTを用いて記述できることを示した。
|