2010 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論における時空構造のホログラフィー原理を用いた解明
Project/Area Number |
20740132
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 匡 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10432353)
|
Keywords | 超弦理論 / Dブレイン / AdS/CFT対応 / 非平衡物理 / トポロジカル絶縁体 |
Research Abstract |
高柳は、引き続き超弦理論で最近盛んに研究されているAdS/CFT対応を用いて物性物理に出てくるような量子多体系の解析を行った。AdS/CFTは、一言でいうと、ある時空上の重力理論とその時間的境界部分で定義されたゲージ理論の等価性であり、強結合で解析が難しいゲージ理論を、ずっと簡単な重力理論(一般相対論)に置き換えることができるので大変強力な解析法である。 研究の内容は主に二つに分かれる。まず量子凝縮系のダイナミカルな非平衡現象は物性物理等でも最近興味をもたれているが、系が強結合の場合は解析が困難である。そこで、AdS/CFT対応を用いた記述方法を考えた。Das氏、西岡氏と共同で、プローブブレインという状況の場合に、系を励起するとブレインが曲がり、そのせいであたかもブラックホールの地平線がブレイン上に生成されることを発見した。また、そのブラックホールが生成するという現象は、エンタングルメント・エントロピーを計算することで詳細の解析や熱化の現象の理解が深められることを宇賀神氏と共同で示した。 もう一つの研究テーマでは、最近の物性物理で盛んに研究されるトポロジカル絶縁体と超弦理論のDプレインとの関係を明らかにした。両者とも数学のK理論で分類されるが、実際に、超弦理論のブレインを組み合わせてトポロジカル絶縁体を構成することができ、うまくDブレインの電荷と、トポロジカル絶縁体の巻き付き数を対応させることができた。これを用いると超弦理論の10次元という臨界次元の数が、トポロジカル絶縁体が10種類あることに対応することが分かる。
|