2011 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論における時空構造のホログラフィー原理を用いた解明
Project/Area Number |
20740132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高柳 匡 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10432353)
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Keywords | 超弦理論 / AdS/CFT / 量子エンタングルメント |
Research Abstract |
本研究の目的は、超弦理論におけるホログラフィー原理を、(量子)重力理論の時空の構造の探求や、強結合の量子凝縮系の解析に応用することである。まず、重力理論の時空の構造を解析する方法として研究代表者は、エンタングルメント・エントロピーを用いたアプローチをここ数年提唱している。その具体的な解析として、AdS空間のワームホールと考えられている時空をエンタングルメントエントロピーを用いて調べて論文として出版した(JHEP06(2011)141)。この研究で、この時空は、エンタングルメントの立場では実はワームホールではないことが分かり、ワームホールのAdS/CFT対応に関するパラドクスが部分的に解消された。さらに、非自明なトポロジーを持つ時空を議論するために、境界を持つ空間の共形場理論(CFT)に対するホログラフィーを提案し(PhysRevLett.107.101602)。またこれを用いて、2次元CFTのboundary entropyと呼ばれる境界の自由度を見積もる量に関して、繰りこみ群で単調減少することを示した。またboundary entropyを高次元のCFTに拡張し(JHEP11(2011)043)。一方、ホログラフィーを強結合系に応用する研究として、AdS/CFTの古典重力の極限で、物性物理で非常に重要なフェルミ面がどのようにあらわれうるのか一般的に調べた。エンタングルメント・エントロピーを用いてフェルミ面を特徴づけるという斬新な手法を用い、どんな古典重力理論でもその物質場の構造によらず、フェルミ面があれば必ずそれはランダウのフェルミ液体にはなりえないという結果を発見した(JHEP01(2012)125)。つまり、ラージN極限の強結合系では、非フェルミ液体のみ実現が可能であるという強い予言を得たことになる。この結果は、超弦理論と物性理論の両分野に大きな反響を呼んでいる。
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