2010 Fiscal Year Annual Research Report
ハドロン加速器および初期宇宙におけるブラックホール
Project/Area Number |
20740133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
FLACHI Antonino 京都大学, 理学研究科, 研究員(科学研究) (20444474)
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Keywords | ブラックホール / ホーキング放射 / 相転移 / 強い相互作用 / NJLモデル |
Research Abstract |
強い相互作用をする場のブラックホールからのホーキング放射により、ブラックホール近傍に光球が形成されるかどうかという問題を議論するための基礎的研究を進めた。強い相互作用をする場は高温相では対称性が回復しているが、低温相では対称性が破れるといった相転移を示す。このような現象は基本的な現象であるが、ブラックホール近傍での曲がった時空の効果を合わせて考えると非常に複雑になり、十分な取り扱いができていないのが現状である。強い相互作用の厳密な取り扱いには格子ゲージ理論による大規模なシミュレーションが必要とされるが、そのような計算を強い重力場中に拡張することは現時点では難し過ぎる問題である。そこで、我々は4点フェルミ相互作用のみを考えるGross-NeveuモデルやNambu-Jona Lasinioモデルを用いて強い重力場中の強い相互作用をする場の振る舞いを解析することを提案した。このようなモデルではフェルミオン対の期待値がオーダーパラメータとなるが、heat Kernel展開を用いて、一般の静的時空における有限温度状態でのオーダーパラメータに対する有効作用を導出することに成功した。この手法を、静的な一様等方宇宙に適用して、曲率の効果による相転移温度の変化や、オーダーパラメータが非一様になる相が現れることなど、予測される現象を確認した。ブラックホールまわりでは重力ポテンシャルの効果で実効的な温度が高温になるため、対称性が回復した相が現れ、遠方では対称性が破れた相へと連続的に変化するバブル構造が有限温度状態の解として得られることが期待される。この手法を用いることで、このような解を構成する研究を進めている。さらに発展として、有限温度状態ではなく、ブラックホールの蒸発に対応するようなUnruh状態における自己無撞着な解を得、強い相互作用をする場のホーキング放射の様子を明らかにすることを目指している。
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